動ける時に動いておく生活の記録

海外渡航や引っ越しなど、行きたいところへ行く生活を動けなくなるまでしたいです

世界の食文化 (5) タイ

寒すぎて出発までの日々を過ごすのがあまりにも辛いため、図書館でタイトルの本を借りて再読しました。

20年前の本で、タイ料理の成り立ち、各地方料理の紹介、レシピ、食材と料理の小辞典などタイ料理について包括的に書かれていて内容の濃い本ですが、珠玉だと思ったのは第一章「バンコクのタイ人・食の風景」です。

この章ではバンコク在住のバックグラウンドが異なる12人の食生活が描かれており、プチ生活史とも言えます。この本を読む前に「大阪の生活史」というレンガのような分厚い本を読んで他人の生活史を覗かせてもらうことの興味深さを再認識しましたが、普通のタイ人の普段の食生活は中短期の滞在では垣間見る事ができないし想像もつかない分一層好奇心を掻き立てられました。

この本の著者である山田さんはバンコクで出家もしているくらいタイとの関係が深い学者ですが、ちょっとタイにいたことがありますというような人が書く本やWeb記事とは一線を画し、2000年代までの食文化を描いた文章としては今でも全く色褪せない内容だと思います。

同じような内容を期待してシリーズの他の国のものも読んでみましたが、第一章のプチ生活史のような内容は同シリーズの他の地域版には書かれていないし、そもそも内容が浅く今時のガイドブックとさほど変わらなかったりするなどでがっかりしました。単にタイ版が大当たりだっただけのようです。

この本が出版された20年前というと私が初めてタイに行ったのと大体同じ時期ですが、この時のバンコクは今のような、スクムウィット通り周辺に空き地ができればすぐさまコンド建築、というほどまでには建設ラッシュではなかった印象です。


物価はインフレ率ベースで見ると2003年の100 THBは2023年の154 THBと等価なので、本に書いてある金額感は今の物価に換算するとTHB建てでおよそ1.5倍になります。またタイバーツの日本円に対する価値はこの20年で1.5倍になっているので、物価水準+為替で単純計算すると2.5倍くらいの価値と言って良いでしょう。よって、例えば2003年時点で30 THB(90円)だったクイティアオは大雑把にいうと今の45 THB(203円)と等価です*1。日本の一般的な人の給料はここ20年でそんなには上がっていないと思いますが、その場合購買力は0.4倍くらいになっているはずなので旅行の原資が日本企業の給与という人は海外に行きづらいのではないかと想像します。*2

プチ生活史の中で印象的だったのはタイほどの外食文化とされる国であっても「週末は家で作る。美味しいから」という語りがいくつかあったことです。タイ料理はこれまで家庭料理と外食メニューが混ざり合って発展してきたそうなので、20年後の今もそうであって欲しいと思います。

本の中で紹介されているレシピの中には肉・魚をがっつり使わずともできそうなものがいくつかあったので、記録しておき今度タイに行ったときにはいくつか試しに作ってみようと思っています。

*1:計算上はそうなりましたが、実際にGoogle Mapsで店の価格を見ると一番安いクイティアオが50 THB(225円)だったので、食べ物はCPI以上に上がっているようです

*2:同じ期間に日本も4%インフレしていますが、100円が104円になるだけなので無きに等しいです